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百日咳

百日咳とは

百日咳とは百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)による呼吸器感染症で、特有のけいれん性の咳発作が長期間にわたって続くことを特徴とします。特に乳幼児では症状が重くなりやすく、肺炎・低酸素・脳症などの合併症を起こすことがあり、まれに死に至ることもあります。
百日咳はワクチンで予防可能な感染症であり、五種混合ワクチンや三種混合ワクチンに百日咳成分が含まれています。適切な時期にワクチン接種を行うことが、重症化予防に極めて重要です。

百日咳の感染経路

  • 飛沫感染(咳やくしゃみ)
  • 接触感染(手やおもちゃを介して)

長引く咳が特徴で、特に咳を介した飛沫感染によって、感染が拡大しやすいです。
潜伏期間は約1~2週間とされています。
発症前後から感染力があり、特に発症初期の「カタル期」や、咳が激しくなる「痙咳期」には、周囲への感染リスクが高くなります。

百日咳の症状

百日咳の主な症状は以下の通りです。

  • 微熱
  • 倦怠感・だるさ
  • 鼻水
  • 無呼吸発作
  • チアノーゼ
  • 嘔吐(咳き込み嘔吐)

典型的な百日咳は、以下のような3つの時期に分けて進行します。

① カタル期(かぜ症状) 
1~2週間

1~2週間の潜伏期の後、鼻水・くしゃみ・軽い咳・微熱といった一般的なかぜの症状が現れます。咳は徐々に悪化し、回数が増えます。
この時期は感染力が最も高いですが、他のかぜとの区別がつきにくく、診断が難しい時期です。

② 痙咳期 2~3週間

この時期には、特徴的な咳の発作が出現します。5~10回ほど連続性の咳が出て、咳が終わるとヒューっと笛が鳴るように息を吸います。この一連の流れを数回~数十回繰り返します。
この咳は特に夜間に悪化することが多く、突然始まります。
乳児期早期では特徴的な咳が目立たずに、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ(唇・顔色が紫色になる)、けいれん、呼吸停止と進展する場合があり、注意が必要です。

一方、学童期以降の百日咳の場合は、特徴的な咳が目立たず、単に咳が長引くという症状のことも多いです。

③ 回復期 2~3週間

咳の発作が徐々に減り、回復していきます。
症状が始まってから完全に治るまでに2~3か月ほどかかることもあります。

百日咳の診断と検査

百日咳の診断と検査百日咳の診断では、特徴的な咳の様式や経過・ワクチン接種歴・周囲での流行状況などを総合的に判断し、必要に応じて以下のような検査が行います。

迅速検査

10分ほどで結果が分かる検査です。短時間で診断できる利点がありますが、検査の精度が十分とは言えません。

遺伝子検査(LAMP法・PCR法)

鼻咽頭ぬぐい液や痰などの検体から百日咳菌のDNAを検出します。感度・特異度ともに高く、確定診断に有用です。検査会社での検査が必要なため、結果が分かるまでに2~5日ほどかかるのが一般的です。

培養検査

鼻咽頭ぬぐい液から百日咳菌(Bordetella pertussis)を培養します。感度はそれほど高くなく、結果が出るまでに時間もかかるため、現在では実際に用いられる機会は限られています。

血液検査(抗体検査)

百日咳菌に対する抗体(IgM・IgG)の値を血液検査で測定します。 ただし、発症初期には抗体がまだ上昇していないことが多く、正確に診断するためには、発症初期と回復期の2回採血する必要があります。こどもの負担が大きく、診断に時間もかかります。

百日咳の
治療と家庭でのケア、再診の目安

百日咳の治療には、マクロライド系抗菌薬の内服を行います。代表的なお薬には、ジスロマック(アジスロマイシン)やクラリスロマイシンなどがあります。
発症初期(カタル期)に抗菌薬治療を開始した場合は、症状の軽減が期待できますが、特有の咳が出る時期(痙咳期)に治療を開始しても、咳症状そのものを十分に抑える効果はあまり期待できません。ただし、周囲への感染拡大を防ぐために抗菌薬治療が重要になります。
乳幼児では低酸素・無呼吸発作・肺炎のリスクがあるため、症状によっては入院管理が必要になることもあります。

家庭でのケア

  • 発熱がある場合は、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)を使用しましょう。
  • 咳がひどいときは、部屋の加湿をして、乾燥しないようにしましょう。
  • 乳幼児の場合は、無呼吸発作やチアノーゼがないかを注意深く観察しましょう。
  • 咳き込みで嘔吐しやすいため、水分は少量ずつこまめに与えましょう。

再診の目安

次のような場合は、再受診をご検討ください。

  • 咳がひどく、呼吸が苦しそう
  • 食事や水分がとれない
  • ぐったりして元気がない
  • 顔色が悪い、唇が紫色になる

そのほか、何かご心配なことがあれば、お気軽にご相談ください。

百日咳の登園・登校について

百日咳の登園・登校について百日咳は、学校保健安全法で出席停止期間が定められている感染症です。基準は以下の通りです。
「特有の咳が消失するまで、または5日間の適切な抗菌薬治療が終了するまで」

百日咳は、抗菌薬の内服を開始してからおよそ5日程度で感染力が著しく低下するとされています。そのため、抗菌薬治療を開始して5日が経過し、全身状態が良好であれば、咳が残っていても登園・登校が可能となります。
ただし、

  • 咳が非常に激しい場合
  • 発作的な咳で日常生活に支障がある場合
  • 体力が十分に回復していない場合

には、無理をせずもう数日自宅で安静にすることをおすすめします。登園・登校の判断に迷う場合は、お気軽にご相談ください。

百日咳の予防・ワクチンについて

百日咳の予防・ワクチンについて百日咳は、通常のかぜのような症状が出る時期(カタル期)から感染力が高いという特徴があります。そのため、日頃からの手洗い・うがい、咳エチケット(マスクの着用など)といった基本的な感染対策が重要です。

百日咳ワクチンについて

百日咳はワクチンで予防できる感染症です。現在、百日咳ワクチンは五種混合ワクチン(Hib、ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ)として、生後2か月から定期接種が行われています。

定期接種スケジュール

  • 生後2か月
  • 生後3か月
  • 生後4か月
  • 1歳

この計4回の接種が基本となります。

百日咳ワクチンの追加接種について

百日咳ワクチンの効果は接種後3~5年ほどで徐々に弱くなることがわかっています。そのため、定期接種ではありませんが、以下の時期での追加接種が推奨されています。

  • 小学校入学前に三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)として追加接種
  • 11歳の定期接種である二種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)を三種混合ワクチンに変更

これにより、本人の発症予防だけでなく、乳幼児への感染予防にもつながります。

よくある質問(Q&A)

百日咳は大人もかかりますか?

はい、大人もかかります。百日咳ワクチンの効果は年数とともに弱くなるため、大人でも感染します。大人の場合は乳幼児のような特徴的な連続性の咳は目立たず、単に咳が長引くという症状だけで経過することも多く、気づかないうちに周囲へ感染を広げてしまうケースもあります。

百日咳は治るまでに100日もかかりますか?

百日咳は症状が出始めてから完全に回復するまでに2~3か月ほどかかることが多いです。「百日咳」という名前のとおり、実際に100日間ずっと激しい咳が続くわけではありませんが、咳症状が長期間続くことが特徴です。

予防接種をしていても百日咳にかかりますか?

はい、かかる可能性はあります。百日咳ワクチンは乳幼児期に定期接種として行われますが、年齢とともに免疫が低下するため、学童期や大人でも発症することがあります。そのため、小学校入学前や11歳時に三種混合ワクチンとしての追加接種(自費)が推奨されています。

きょうだいが百日咳と診断された場合、どうすればいいですか?

同居家族は濃厚接触者となるため、注意が必要です。早期に抗菌薬治療を開始できれば、重症化を防げる可能性があります。咳・鼻水・微熱などのかぜ症状が出た場合は、早めに医療機関へご相談ください。

百日咳の咳は、普通のかぜとどう違いますか?

百日咳は年齢によって症状の出方が異なります。乳児期早期(特にワクチン未接種)に感染した場合は、重症化しやすく、次のような特徴的な咳がみられます。

  • 短い咳が連続して止まらなくなる
  • 咳の最後に「ヒューッ」という笛のような音がする
  • 夜間に悪化しやすい

さらに、無呼吸発作やチアノーゼ、けいれんを起こすこともあり、注意が必要です。
一方で、小学生以降や大人の場合は、普通のかぜのような咳が長引くだけで、百日咳と気づかれずに経過するケースも少なくありません。