~CT検査の必要性・安心できるまでの時間・受診の判断基準まで~
- はじめに:
こどもの頭部打撲は日常茶飯事 - 注意すべき症状:これがあれば要受診
- CT検査は必要? PECARN基準に基づいた判断、被ばくのリスクは?
- 病院受診の判断基準:受診する?様子を見る?
- 何時間まで様子を見れば安心?自宅での見守りポイント
- まとめ:慌てず、でも油断せずに
- 参考文献・ガイドライン
はじめに:
こどもの頭部打撲は日常茶飯事
寝返りが始まる時期、歩き始めの時期などは「ベッドやソファから落ちた」、「転んで頭をぶつけた」など頭をぶつけてしまうことは少なくありません。
一方で、「念のため頭のCTを撮ったほうがよいのでは?」「病院に行くほどのことなのか?」と判断に迷う親御さんも多くいらっしゃいます。
そこで今回は、小児の頭部打撲時に注意すべき症状や受診の目安、CT検査の基準やリスク、安心できるまでの観察期間などを、小児科専門医の視点で整理してお伝えします。
注意すべき症状:
これがあれば要受診
頭を打ったあとに、次のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 一時的にでも意識を失った(意識消失)
- 嘔吐を2回以上繰り返す
- けいれんを起こした
- 頭痛がひどく、長時間持続する
- 顔色が悪く、ぐったりしている
- 手足の動きに左右差がある
- 瞳孔の大きさが左右で異なる
- 耳や鼻から透明な液体が出る(髄液漏れの可能性)
CT検査は必要?
PECARN基準に基づいた判断、
被ばくのリスクは?
CT検査は、頭の中の出血を見つけるために有効な検査です。ただし、放射線被ばくのリスクがあり、小さなお子さまには慎重に検討すべき検査です。CT検査の必要性を検討するのに「PECARNのルール」という信頼性の高いスクリーニング基準があります。
例えば、2歳未満では以下のすべてに当てはまらない場合、治療を必要とする脳の損傷リスクは0.02%未満と推測されます。
- 意識レベルが低下している
- 呼びかけてもすぐに眠ってしまうなどの意識変容
- たんこぶ(皮下血腫)
- 5秒以上の意識消失
- 親からみて「普段と様子が違う」
- 激しい受傷機転(交通事故など)
CT検査には放射線被ばくが伴います。成人に比べて放射線の影響を受けやすいこどもにおけるCT検査の必要性は慎重に検討する必要があるので、保護者の方からの説明と診察した所見をあわせて総合的にCT検査の必要性を判断いたします。
年齢ごとの正確なリスクを示すのは難しいですが、将来的に白血病や脳腫瘍が起こる可能性に、まったく影響がないとは言えません。
病院受診の判断基準:
受診する?様子を見る?
次のような状況であれば、受診を検討しましょう
- 生後6か月未満の赤ちゃんが頭をぶつけた
- 「いつもと違う」と親が感じる異常な様子
- 受傷後に嘔吐を繰り返す
- 高所(ベッド、階段、ソファなど)からの落下
高所からの落下については、前述のPECARNのルールで以下のように定義され、CT検査が推奨されています。
- 2歳未満:90cm以上からの落下
- 2歳以上:150cm以上からの落下
このため、大人の腰の高さより高い場所から落下した場合は、必ず病院を受診することをおすすめします。また、階段から5段以上転げ落ちた場合も同様に、必ず受診するようにしましょう。
逆に、以下のような場合は自宅での様子見も可能です
- 打った直後に泣き、すぐ機嫌が戻った
- 嘔吐や意識変化などがない
- 普段通りに遊び、食事も取れている
何時間まで様子を見れば安心?
自宅での見守りポイント
受傷後、24時間以内は注意して観察が必要とされています。
自宅で様子を見る際は、以下の点に注意して観察してください
- 呼びかけに反応するか?
- 普段通りに食事や遊びができているか?
- 目の動き、手足の動きに異常はないか?
- 嘔吐・ぐったり感が出ていないか?
また、ぶつけた直後は元気でも、数時間後に症状が出ることもあるため、受傷から1日はしっかり見守りましょう。
まとめ:慌てず、でも油断せずに
こどもの頭部打撲の大半は軽症ですが、中には頭蓋内出血や脳損傷といった重篤なケースも含まれます。
- 明らかな異常があればすぐに受診
- 判断が難しいときは小児科や救急に相談
- CT検査はリスクとメリットを見極めて実施
- 経過観察の目安は頭をぶつけてから24時間
親としては不安になる場面かと思いますが、「慌てすぎず、でも油断せずに」お子さまを見守ってください。
参考文献・ガイドライン
- 日本小児神経学会「小児頭部外傷時のCT撮像基準の提言・指針」
- Effect of the Head Computed Tomography Choice Decision Aid in Parents of Children With Minor Head Trauma: A Cluster Randomized Trial.
