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マイコプラズマ肺炎

小児科専門医からのひとこと

マイコプラズマ感染症は、こどもに多い「長引く咳」の代表的な原因のひとつです。他の感染症と比べて迅速検査の精度が低く、症状のピークが過ぎてから診断がつくことも珍しくありません。近年は耐性菌の問題もあり、抗菌薬の選択も含めた治療にも注意が必要です。治療を開始しても症状の改善が乏しい場合は、医療機関を再度受診することが重要です。

マイコプラズマ感染症とは

マイコプラズマ感染症は、「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌に似た微生物によって起こる呼吸器感染症です。6歳~12歳の学童期のこどもに多くみられますが、幼児や成人に感染することもあります。一般的なかぜよりも症状が長引きやすく、特に咳の症状は3~4週間ほど続くことも珍しくありません。肺炎を起こした場合には「マイコプラズマ肺炎」と呼ばれます。流行は数年ごとに周期的に繰り返される傾向があります。

マイコプラズマ感染症の感染経路

マイコプラズマは飛沫感染(咳やくしゃみによる)や接触感染(手指や物を介して)で広がります。潜伏期間は2〜3週間と比較的長いため、学校や家庭で気づかないうちに感染が広がってしまうことがあります。

マイコプラズマ感染症の症状

代表的な症状は以下の通りです。

  • 発熱
  • しつこい咳(3~4週間ほど続くこともある)
  • 頭痛、倦怠感

長引く発熱、咳を認める場合にはマイコプラズマ感染症を疑います。

マイコプラズマ感染症の
診断と検査

マイコプラズマ感染症の診断は、他の感染症に比べてやや難しいのが特徴です。迅速検査の精度が高くないため、症状や経過、画像所見なども重要となります。

胸部レントゲン

胸部レントゲン検査だけで確定診断はできませんが、レントゲンでマイコプラズマ肺炎に特徴的な所見を認めた場合には、以下に示す核酸同定検査(LAMP法)や血清抗体検査を行い、確定診断をします。

迅速検査

鼻から綿棒を入れて、鼻咽頭ぬぐい液を採取し、マイコプラズマ抗原を検出します。結果が15分ほどでわかる利点がありますが、感度(正しく陽性を検出できる割合)は高くなく、偽陰性(実際は感染していても陰性と出ること)が少なくありません。マイコプラズマ感染症の迅速検査は他の感染症の迅速検査と比べて、精度が高くないことが難点です。

血清抗体検査

血液中の抗体(IgM、ペア血清での抗体価上昇)を測定します。発症初期では抗体価が上昇していないことがあり、正確な診断を行うためには急性期と回復期(発症から2~4週間後)の2回の採血が必要です。そのため、こどもへの採血の負担が大きいことや確定診断に時間がかかることが難点です。

核酸同定検査(LAMP法)

咽頭ぬぐい液や痰などの検体から、マイコプラズマDNAを検出します。迅速検査よりも精度が高く、確定診断に用いられることが多い検査です。ただし、検査は外部の検査会社に委託されることが多く、結果が出るまでに3~7日ほどかかります。

当院では診察所見や状況に合わせて、迅速検査やLAMP法での検査を行います。

マイコプラズマ感染症の治療

マイコプラズマは細菌に近い微生物ですが、細胞壁を持たないため、一般的な細菌感染症でよく使用されるペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は効果がありません。治療には、マイコプラズマに有効なマクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)を使用します。

耐性菌について

近年、日本を含むアジア諸国では、マクロライド耐性マイコプラズマの増加が問題となっています。マクロライド系抗菌薬を2~3日使用しても、効果がみられない場合には、耐性菌の可能性を考慮し、次の抗菌薬を検討します。

  • テトラサイクリン系(ミノサイクリンなど)
    副作用として歯の黄染のリスクがあり、8歳未満のお子さまには使用できません。
  • キノロン系(トスフロキサシンなど)
    マクロライド感性のマイコプラズマ(=マクロライドが効く菌)の場合、テトラサイクリン系やキノロン系よりもマクロライド系の方が効果は高いとされています。
    また、キノロン系抗菌薬を安易に使用すると、キノロン系耐性のマイコプラズマが増えるおそれがあるため、まずはマクロライド系で治療を開始することが日本小児科学会でも推奨されています。

マイコプラズマ感染症の
家庭でのケアと再診の目安

  • 咳が強いときは加湿を心掛けましょう。
  • 発熱がある場合には解熱剤を使用しましょう。
  • 咳は3~4週間続くこともあるため、悪化していなければ経過を観察しましょう。
  • 抗菌薬を飲み始めて2~3日経っても、熱が下がらない場合には、耐性菌の可能性もあるため再受診をしてください。
  • 咳が強く、呼吸が苦しそうな場合は再受診をしてください。

マイコプラズマ感染症の
登校・登園について

マイコプラズマ感染症には、学校保健安全法で定められた出席停止期間はありません。
解熱し、咳の症状が落ち着いていれば、登園・登校が可能です。

マイコプラズマ感染症の
よくある質問(Q&A)

インフルエンザのように迅速診断ができますか?

マイコプラズマの迅速検査はありますが、精度が十分ではありません。そのため、迅速検査で陰性でもマイコプラズマの感染を完全に否定することはできません。

マイコプラズマは何度も感染しますか?

はい、終生免疫がつかないため何度も感染することがあります。

大人にもうつりますか?

はい、うつります。家庭内での感染が多く、保護者の方にうつるケースもよくあります。

マイコプラズマは抗菌薬を飲まないと治らないですか?

軽症のマイコプラズマ感染症の場合は、通常のかぜと同様に1週間ほどで自然に治癒します。

抗菌薬を飲めばすぐに咳は止まりますか?

咳は抗菌薬を開始しても、咳が数週間続くことがあります。咳だけ長く残るのはマイコプラズマ感染症の特徴のひとつです。

抗菌薬が飲めないときはどうしたらいいですか?

マイコプラズマ感染症に対するマクロライド系抗菌薬は苦みがあり、苦手なお子さまも多いです。以下のような工夫を試してみてください。

  • 水に混ぜて飲ませる場合は、飲ませる直前に混ぜるようにしましょう。
  • プリン、アイスクリーム、牛乳などに混ぜると、飲みやすくなることがあります。

どうしても飲めない場合は、自己判断で中止せず、医療機関にご相談ください。