- とびひ(伝染性膿痂疹)とは?
- 「とびひ」の種類と原因菌
- なぜ「とびひ」になるのか?
- 「とびひ」を未然に防ぐために
- 「とびひ」の治療とホームケア
- ご家庭でのケア
- 「とびひ」で注意が必要なケース 耐性菌と重症化について
- 「とびひ」の登園・登校について
- よくある質問(Q&A)
とびひ(伝染性膿痂疹)とは?
「とびひ」は、正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と呼ばれる、こどもに多い皮膚の細菌感染症です。特に夏に流行します。
虫刺され、湿疹、あせもなどによる皮膚の小さな傷口から細菌が入り込み、水ぶくれ・赤み・かさぶたが生じます。患部を掻いた手で別の場所を触ることで、火事の火の粉が飛び火するように短期間で全身へ広がることがあり、この様子から「とびひ」と呼ばれています。
「とびひ」の種類と原因菌
とびひ(伝染性膿痂疹)には、症状の出方によって大きく2つのタイプがありますが、複数の菌が混合して感染することもあります。
水疱性膿痂疹
主に黄色ブドウ球菌が原因菌です。
水ぶくれ(水疱)ができやすく、破れるとじゅくじゅくした状態になります。
痂皮性膿痂疹
A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因菌です。
赤みやただれがみられ、厚いかさぶた(痂皮)を形成します。
なぜ「とびひ」になるのか?
健康な皮膚は「バリア機能」によって守られていますが、以下のようなきっかけで細菌が入り込みます。
- 虫刺されを掻き壊してしまう
- あせも(汗疹)
- 湿疹(アトピー性皮膚炎など)
- 転んでできた擦り傷
- 鼻をいじる癖(鼻の穴には常在菌としてブドウ球菌がいることも)
これらの小さな傷口に細菌が感染し、増殖することで症状が現れます。
「とびひ」を未然に防ぐために
こどもに「掻かないで」は通用しません
とびひは全身に広がってしまうと、完全に治るまで2週間ほどかかることも多く、お子さまにとっても、保護者の方にとっても大きなストレスになります。
しかし、幼児期のこどもにとって、かゆみを我慢することはとても難しいことです。無意識のうちに掻き壊し、その指でからだの他の場所を触ることで、症状は一気に広がってしまいます。
だからこそ、「掻かないで」と注意するだけではなく、とびひを未然に防ぐ工夫がとても大切です。以下の点に気をつけましょう。
保湿による皮膚バリア機能の維持
乾燥した肌は細かいひび割れが起きやすく、細菌の侵入口になります。毎日の保湿で、肌のバリア機能を強化しましょう。
アトピー性皮膚炎のコントロール
アトピー性皮膚炎のお子さまは、とびひを合併しやすい傾向があります。定期的な通院と治療を継続し、皮膚の状態を良好に保ちましょう。
虫刺され、あせも(汗疹)を放置しない
とびひは、虫刺されや汗疹が増える夏場に流行します。虫刺されや汗疹にはステロイド外用薬が有効ですので、症状が出たら放置せずに早めに対処しましょう。
掻き壊してしまう前に治療を開始することが重要です。
爪を短く清潔に
もし掻いてしまっても肌を傷つけないよう、爪はこまめに切り、手洗いの習慣をつけましょう。
「とびひ」の治療とホームケア
全身に広がる前に治療を始めましょう
とびひは、全身に症状が広がってしまうと、完治までに1~2週間ほどかかることがあります。そのため、患部が一部分にとどまっているうちに治療を開始することが大切です。
患部が一部だけの場合の治療
塗り薬の抗菌薬
とびひの範囲がまだ狭い場合には、抗菌薬の軟膏による治療を行います。
塗り薬の例
- フシジンレオ軟膏(1日数回)
- アクアチム軟膏(1日2回)
軟膏を塗ったあとは、ガーゼなどで保護をします。
患部が全身に広がり、広範囲に多発している場合の治療
飲み薬の抗菌薬+塗り薬の抗菌薬
とびひが広範囲に広がっている場合や、塗り薬のみでは改善がみられない場合には、飲み薬の抗菌薬(内服抗菌薬)と塗り薬の抗菌薬を併用して治療を行います。
抗菌薬は、症状が良くなってきても自己判断で中止せず、医師から指示された服用回数・期間を守って内服することが大切です。
内服抗菌薬の例
- ケフラール:1日3回
- ケフレックス:1日3~4回
- サワシリン:1日3回
- バクタ:1日2回
※使用する抗菌薬の種類は、原因菌によって異なります。
ご家庭でのケア
ご家庭では、以下の2点に注意しましょう。
患部を清潔に保つ
泡立てた石鹸の泡で、やさしく丁寧に患部を洗いましょう。入浴後は、浸出液が他の皮膚につかないように拭き、その後に軟膏を塗り、ガーゼなどで保護しましょう。
「軟膏+ガーゼ」が基本
軟膏を塗った患部は、必ずガーゼや包帯で覆いましょう。これは、薬の浸透を助けるだけでなく、お子さまの手が患部に直接触れるのを防ぎ、感染の広がりを予防するためです。
「とびひ」で注意が必要なケース 耐性菌と重症化について
薬が効きにくい「耐性菌(MRSA)」
近年、一般的な抗菌薬が効かない「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」という菌によるとびひが増えています。処方された薬を2〜3日使っても全く改善が見られない場合は、このMRSAの可能性があります。その際は、菌の検査(培養検査)を行い、有効な別の抗菌薬へ速やかに変更する必要があります。
全身の皮膚がやけどのように赤くなる「SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)」
とびひの原因菌が出す毒素が血液に入り込み、全身に回ってしまうことがあります。これを「SSSS」と呼び、まるで全身にやけどを負ったかのように皮膚が赤く腫れ、ベロリと剥がれてしまいます。入院での抗菌薬治療が必要になることも多く、早期の受診が必要です。
「とびひ」の登園・登校について
とびひ(伝染性膿痂疹)には、学校保健安全法で定められた出席停止期間はありません。
ただし、接触によって他のお子さまに感染を広げてしまう可能性があるため、患部はガーゼなどでしっかり保護しましょう。
よくある質問(Q&A)
保育園や学校は休ませるべきですか?
患部を適切に覆っていれば、登園・登校は可能です。
プールや水遊びはしてもいいですか?
病状が悪化する可能性があるため、治癒するまではプールや水遊びは控えましょう。また接触により周囲への感染を広げてしまう恐れがあります。
塗り薬や飲み薬を使っても、よくなっていない気がします。
耐性菌によるとびひの可能性があります。治療を開始して数日経っても、症状が改善しない場合には、再度医療機関に相談する方がよいでしょう。
きょうだいと一緒にお風呂に入ってもいいですか?
できれば、治るまでは別々に入り、最後に入るようにしてください。タオルやバスマットの共有も控えましょう。
鼻をよくいじるのですが、関係ありますか?
関係があります。鼻の穴の入り口には、とびひの原因となる黄色ブドウ球菌が常在菌として存在します。鼻をいじった手で湿疹や傷口を触ることで、とびひが始まったり、繰り返したりすることがあります。
