- 熱性けいれんとは
- 熱性けいれんの分類
- 熱性けいれんの症状
- 熱性けいれんが起きたときの対応
- 熱性けいれんの検査 脳波検査は必要?
- 熱性けいれんの再発 熱性けいれんは繰り返す?
- 熱性けいれんの予防 ダイアップ坐剤はどんな場合に必要?
- 熱性けいれんとてんかんの関係
- よくある質問(Q&A)
熱性けいれんとは
熱性けいれんとは、生後6か月〜5歳(満60か月)頃までの乳幼児が、発熱に伴って突然起こすけいれん発作のことです。日本ではおよそ10人に1人が経験するとされ、決して珍しい病気ではありません。原因の多くは感染症による発熱で、特にインフルエンザ・突発性発疹・ヘルパンギーナなどに感染した際に起こりやすいことが分かっています。
けいれんの多くは数分以内に自然におさまり、後遺症を残さずに回復します。そのため、発作の様子を初めて見たご家族は大変驚かれますが、ほとんどの場合は命に関わることはありません。
熱性けいれんの分類
熱性けいれんは「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」に分類され、全体の80~90%は単純型熱性けいれんが占めます。両者を厳密に区別するのが難しいケースもありますが、
それぞれの特徴は以下の通りです。
① 単純型熱性けいれん
- 発作時間が15分未満
- 24時間以内に1回のみ
- 左右対称のけいれん
② 複雑型熱性けいれん
- 発作時間が15分以上
- 24時間以内に2回以上
- 片側だけのけいれん
- けいれんを伴わず、一点をじっと見つめる・
動作が止まるなどの発作(意識障害のみ)
熱性けいれんの症状
熱性けいれんの典型的な症状は以下の通りです。
- 突然意識がなくなる
- 白目をむいて手足をガクガクさせる
- 体がつっぱる
- 唇が紫色になる(けいれん中は一時的に酸素濃度が下がることがあります)
- けいれん後はしばらくぼーっとする
けいれんは2-3分以内に収まることが多く、5分以上続く場合はためらわずに救急要請をしてください。
熱性けいれんが起きたときの対応
自分のお子さまがけいれんを起こした場面で冷静に行動することは、とても難しいものです。いざというときに慌てないために、まずは最低限、次の3つだけ覚えておきましょう。
けいれん時に必ず行う
3つのポイント
- 5分以内におさまらない場合は、ためらわず救急要請をする。
- 発作が始まった時間と、おさまった時間を確認する。
- 嘔吐やよだれに備え、顔を横向きにして気道を確保する。
人手や心の余裕があれば、
- けいれんの様子を動画で撮影する
- 手足の動きに左右差があるか確認する
ことも診断の助けになります。
救急車を呼ばなくてもよいケース
けいれんが5分以内に自然におさまり、その後に
- しっかり泣く
- 目が合う
- 会話や反応が戻る
など、意識がきちんと回復している場合は、救急車ではなく自家用車などで医療機関を受診して構いません。
熱性けいれんの検査
脳波検査は必要?
単純型熱性けいれんの場合、血液検査、髄液検査、画像検査(CT・MRI)、脳波検査は、原則として必要ありません。
一方で、以下のような場合には、原因の見極めや重症疾患を除外するために、より詳しい検査を行うことがあります。
- 受診時の全身状態が悪い
- けいれんが 15分以上続いた
- 無熱時(熱がないとき)にけいれんを起こした
- けいれん後に麻痺(Todd麻痺など)が残る
- 大泉門の膨隆、項部硬直など、細菌性髄膜炎を疑う所見がある場合
熱性けいれんの再発
熱性けいれんは繰り返す?
熱性けいれんを一度経験したお子さまのうち、約30%で再発がみられるとされています。
特に、以下の4つのうちいずれかに当てはまる場合は、再発のリスクが高くなります。
- 熱性けいれんの家族歴がある(両親・きょうだい)
- 1歳未満での発症
- 発熱から短時間(1時間以内)でけいれんが起こした
- けいれん発症時の体温が39℃以下
再発を数回繰り返すお子さまもいますが、年齢とともにけいれん発作は徐々に起こりにくくなり、多くは6歳頃までに自然におさまります。
熱性けいれんの予防
ダイアップ坐剤は
どんな場合に必要?
熱性けいれんを経験したお子さまが発熱した際、ダイアップ(ジアゼパム)坐剤を使って再発を予防する方法があります。ただし、副作用としてふらつき・眠気・反応が鈍くなるといった症状が出ることがあります。また、ダイアップを使用すると、髄膜炎や脳炎・脳症などの重篤な疾患と熱性けいれんの区別がつきにくくなることもあるため、すべてのお子さまに必要なわけではありません。
以下の条件に該当する場合に限り、予防投与を検討します。
ダイアップ坐剤の予防投与を検討するケース
次のAまたはBのいずれかを満たす場合、医療機関で予防投与について相談しましょう。
A. 15分以上続くけいれん発作の既往がある
B. 以下(1)~(6)のうち 2 項目以上を満たす熱性けいれんが、2回以上起こっている場合
(1) 左右差のあるけいれん、または 24時間以内に2回以上のけいれん発作
(2) けいれん発作前から、発達遅滞・神経学的異常がある
(3) 熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
(4) 初回発作が1歳未満
(5) 発熱後1時間未満でけいれんを起こした
(6) 38℃未満の発熱でけいれんを起こした
※これらに該当するお子さまは多くありません。
適応条件は複雑なため、かかりつけ医とメリット・デメリットを十分に相談して決めることが大切です。
ダイアップ坐剤の予防投与の方法
実際に予防投与を行う場合、次の方法が一般的です。
- 37.5℃以上の発熱を認めたら、あらかじめ指示された量のダイアップ坐剤を挿肛する
- 最初の投与から8時間以内に発熱が持続している場合、同量をもう一度挿肛する
予防投与時の注意点
1回の発熱につき、使用は通常2回までです。
熱性けいれんの約8割は発熱から24時間以内に起こります。
ジアゼパム坐薬(ダイアップ)を2回使用すると、36〜48時間は薬の血中濃度が保たれるため、通常は追加投与の必要はありません。
必要以上に薬を追加すると副作用のリスクが高まるため、医師の指示に従って使用してください。
解熱剤の坐薬を一緒に使う場合は、ダイアップ坐剤を先に使用してください。
30分の間隔をあけて解熱剤を使用してください。同時に使うと、薬の吸収が遅れる可能性があります。
使用量は体重によって異なります。
体重が増えているのに以前の坐薬を使うと、薬の量が不足して効果が得られないことがあります。何kgまで現在の坐薬を使えるか、かかりつけ医に確認しておきましょう。
熱性けいれんとてんかんの関係
多くの熱性けいれんは将来的にてんかんへ移行することはありません。
熱性けいれんの既往があるお子さまが、将来てんかんを発症する確率は2〜7.5%程度とされており、90%以上のお子さまはてんかんを発症しません。
一般的なてんかんの発症率は1%程度なので、それに比べるとわずかに発症率は高いですが、過度に心配する必要はありません。
よくある質問(Q&A)
6歳をこえても熱性けいれんを起こすことはありますか?
一般的な熱性けいれんは6歳までにほとんど起こらなくなります。
しかし、6歳を過ぎて発熱に伴うけいれんを頻回に起こす場合は「熱性けいれんプラス」と呼ばれ、通常の熱性けいれんとは異なる病態が含まれることがあります。一度、小児神経専門医の評価を受けることが推奨されます。
ダイアップ(ジアゼパム)の予防投与はいつまで続ければいいですか?
予防投与をいつやめるかという明確な基準はありません。
一般的には次のようなタイミングで中止を検討することが多いです。
- 1~2年間けいれんを起こしていない場合
- 4~5歳頃になった場合
予防投与を開始した理由や、これまでの発作の経過によって適切な終了時期は異なります。
予防投与を行うと決めたかかりつけ医と相談しながら、中止の時期を判断しましょう。
解熱剤を使うと、熱性けいれんを予防できますか?
残念ながら、解熱剤には熱性けいれんを予防する効果はありません。ただし、発熱によるつらさや不快感を和らげる目的で使用することは問題ありません。
けいれんが短くても毎回受診した方がいいですか?
けいれん後の意識状態を確認するため、基本的には医療機関を受診することをおすすめします。
熱性けいれんの既往があり、典型的な単純型熱性けいれんで、けいれん後の反応も良好であれば、翌日以降の受診でも構いません。
