- 誤飲とは こどもが誤って飲み込んでしまった
- 飲み込んだかどうか分からないとき
- 異物誤飲を疑い、受診をする際に
- 緊急で処置や受診が必要なケース
- 少量の誤飲であれば、あまり心配がないもの
- 誤飲を予防するために
こどもが誤って飲み込んでしまった
誤飲とは
「誤飲(ごいん)」とは、本来食べ物ではないものを誤って飲み込んでしまうことを指します。特に乳幼児は、身の回りの物を何でも口に入れて確かめる時期があり、生後6か月頃から2歳頃までのお子さまに多くみられます。
誤飲する物としては、タバコ、硬貨、おもちゃの部品、電池(特にボタン電池)、磁石、薬、乾燥剤、魚の骨などが代表的です。多くの場合は自然に便と一緒に排出されますが、物の種類や大きさ、形状によっては、命に関わる危険な状態になることもあります。
ここでは、緊急で受診や処置が必要なケース、飲み込んでしまっても経過観察が可能なケース、そして受診の際に注意していただきたいポイントについて、具体例を交えてご説明します。
飲み込んだかどうか分からないとき
実際の診療では、「飲み込んだ瞬間を見ていない」「気付いたら物がなくなっていた」というご相談もよくあります。誤飲したとしても、すぐ症状が出ないことが多いため、まずは「誤飲した可能性がある」と考えて対応することが大切です。
そのうえで、誤飲した可能性のある物が、経過観察でよいものか、緊急性の高いものかを判断し、受診を検討しましょう。
また、以下のような様子がある場合は、誤飲を疑う必要があります。
- 嘔吐した
- 機嫌が悪く、ぐったりしている
こうした変化がみられるときは、はっきりと誤飲を確認できなくても、早めの受診をおすすめします。
異物誤飲を疑い、受診をする際に
受診される際には、「何を」「いつ頃」「どのくらい」飲み込んだ可能性があるかを、分かる範囲でできるだけ詳しくお伝えください。誤飲した物の種類によっては、飲み込んでからの時間によって、対応が変わることがあります。
また、飲み込んだ可能性のある物の実物や、同じ製品の予備があれば、是非ご持参ください。実際の物があることで、大きさや材質、形状が正確にわかり、診断や治療方針の判断に役立ちます。
必要に応じて、レントゲン検査の際に、同じ物をお子さまの体の近くに置いて、どのように写るかを確認しながら診断を行うこともあります。
緊急で処置や受診が必要なケース
気道異物による窒息
まず最も緊急性が高いのが、「気道異物(のど・気管・気管支に物が入ってしまう状態)」です。「誤飲」と「誤嚥・窒息」は紙一重であり、以下のような症状がみられる場合には、気道に異物が入っている可能性があります。
- 突然激しく咳き込んだ
- ゼーゼー、ヒューヒューという苦しそうな呼吸
- 声が出ない、泣けない
- 顔色が青白くなる、唇が紫色になる
- 呼吸が明らかに苦しそう
- 急にぐったりする
特に声が出せない、顔色が悪くなるなど窒息を疑う場合には、ためらわずに救急要請をし、同時に異物除去を開始してください。
気道異物除去の方法
1歳未満の赤ちゃんの場合
- 赤ちゃんの顔を下に向けて、頭を体より低く支えます
- 背中(肩甲骨の間)を、手のひらで5回しっかり叩きます(背部叩打)
- 異物が出ない場合は、仰向けにして
- 左右の乳頭を結んだ線の中央で、少し下側を2本指で5回押します(胸部突き上げ)
①~④を繰り返し行います。
反応がなくなった場合は、ただちに心肺蘇生を開始し、救急隊の指示に従ってください。
1歳以上のこどもの場合
まずは背部叩打法を試します。それでも窒息が解除できない場合は、以下の方法を異物が出るまで行います。
- こどもの背中側から腕を回します
- 片手をみぞおちの少し下に当てます
- もう一方の手で包み込むように両手を組みます
- 手前上方(自分の体の方)に向かって、素早く突き上げます(腹部突き上げ法)
意識を失った場合は、直ちに心肺蘇生を開始してください。
「誤飲」で緊急性の高いケース
ボタン電池
電圧の高いリチウム電池は特に危険です。直径が大きい場合には食道に引っかかりやすく、短時間で重い損傷を生じることがあります。誤飲から2時間以内の除去が望まれます。
複数の磁石
磁石同士が腸管をはさみ込むようにくっつくことで、胃や腸に穴があく(穿孔)などの重い合併症を起こす危険があります。
釘、画鋲などの鋭利なもの
消化管を傷つけ、出血や穿孔を起こす危険があります。症状がなくても受診が必要です。
タバコ(特にタバコが浸かった水を飲んだ場合)
タバコを約30分間水に浸すと、ニコチンがほぼ100%溶け出すため、タバコが浸かっていた水を飲んだ場合は特に危険です。誤飲から1時間以内であれば、胃洗浄の適応となることがあり、気づいた時点ですぐに受診をしてください。
一方で、食べたタバコが2cm以下で、症状がなければ特別な処置は不要で、経過観察が可能です。タバコは誤飲から4時間たっても無症状であれば、その後症状が出ることは稀です。
近年、加熱式タバコのスティックを誤飲するケースも増えています。紙タバコの半分ほどの長さであり、こどもが一口で口に入れられるので、注意が必要です。
薬品・洗剤・化学物質など
内容成分や量によって対応が大きく異なります。
無理に吐かせることはせず、日本中毒情報センターなどの専門相談窓口に連絡し、指示を受けながら対応することが重要です。
少量の誤飲であれば、あまり心配がないもの
以下のようなものは、少量であれば症状を引き起こす可能性は低いとされています。多くの場合、自然に便と一緒に排出されます。
- 紙
- 粘土
- クレヨン
- シャボン玉液
- シリカゲル(乾燥剤)
- シャンプー
- 水彩絵の具
油性絵の具の場合はすぐに受診をしましょう。
蚊取り線香
液体タイプの場合、石油系の溶剤が含まれているためすぐに受診をしましょう。
鈍的なもの(おもちゃ、硬貨など)
一刻を争う緊急性はありませんが、必ず受診はしてください。胃の中に落ちたおもちゃは概ね3日以内、遅くとも2週間以内には便と一緒に排出されます。排出を確認できるまでは、便を注意深く観察しましょう。
お子さまの体格にもよりますが、500円玉硬貨など大きめのものは、胃の中に残り続けてしまうことがあります。レントゲンで位置を確認しながら、経過観察を行いますが、場合によっては内視鏡での摘出が必要になることもあります。
誤飲を予防するために
異物誤飲は、日頃の環境整備で防ぐことができる事故でもあります。
こどもは想像以上に何でも口に入れてしまいます。目安として「トイレットペーパーの芯を通る大きさのものであれば、何でも飲み込める可能性がある」と考えておくとよいでしょう。
特に以下の点に注意しましょう
- 床やテーブルの上に小さな物を置いたままにしない
- 電池(特にボタン電池)は必ずフタ付きケースに入れて保管する
- おもちゃは対象年齢を守って使用する
- 兄姉のおもちゃや文房具の誤飲に注意する
- 薬やサプリメントは、必ずこどもの手の届かない場所に保管する
- タバコの吸い殻は、すぐに処分をする
ボタン電池は、リモコン、体温計、時計、おもちゃなど、身の回りのさまざまな製品に使われており、気づかないうちに外れてしまうこともあります。定期的に点検することも大切です。
ご家庭でのちょっとした工夫と注意が、重い事故の予防につながります。
