こどもの便秘について
こどもの便秘は、決して珍しい病気ではなく、日常診療でも非常によくみられるお悩みのひとつです。
「数日に1回は出ているから大丈夫そう」「様子を見ていればそのうち治るのでは」と思われがちですが、便秘を放置してしまうと、ある日突然強い腹痛や排便時の強い痛みで苦しむことも少なくありません。このページでは、
- 便秘を疑う症状
- 受診を検討したほうがよい目安
- 便秘になりやすい時期
- こどもの便秘の治療
について、保護者の方にわかりやすく解説します。
うちの子って便秘?
何日出ないと要注意?
こどもの排便回数は、年齢や月齢によって大きく異なります。特に乳児期は個人差が大きく、1日に何回も排便があることもあれば、数日に1回のこともあります。下の図は、健常児における年齢別の排便回数の目安を示したものです。
出典:小児慢性機能性便秘診療ガイドライン
こどもの便秘の目安として、排便が週に2回以下の場合は、便秘が疑われます。
ただし、便秘は排便の回数だけで判断するものではありません。毎日うんちが出ていても、次のような症状がみられる場合は、便秘の可能性があります。
便秘を疑う症状
- 排便のときに痛みがある・泣く・強くいきむ
- 便が硬く、コロコロしている(いわゆる「うさぎのうんち」)
- 排便に時間がかかる(5~10分以上)
- 便が漏れる(下着に便がついている)
- お腹が張る、食欲が落ちる
- お腹の痛みを訴える
- 不機嫌になる、泣き止まない
- 吐き戻しが増える
受診の目安
毎日排便があることが理想ですが、医療機関を受診する目安は以下の通りです。
- 2日に1回排便があり、特につらそうな様子がない
→まずは自宅で様子をみて問題ありません。 - 3日に1回程度の排便
→時間があるときに、一度医療機関で相談しましょう。 - 5日に1回程度の排便、もしくは上記の便秘症状があり、つらそうな様子がある
→できるだけ早めの受診をおすすめします。
便秘になりやすい3つの時期
こどもの便秘は、生活の変化がきっかけで起こりやすいのが特徴です。特に、次の3つの時期は注意が必要です。
① 乳児期
母乳からミルク栄養に変わるときや、離乳食を開始するときに便秘になりやすくなります。
② 幼児期
トイレトレーニングの時期は、こどもの便秘が最も起こりやすい時期です。
無理なトイレトレーニングは便秘の悪化につながりますので、焦らないことが重要です。こどもは排便を我慢することができるので、保育園や幼稚園では絶対にうんちをしないという子も珍しくありません。
③ 学童期
小学校入学などの環境の変化やストレスをきっかけに、便秘になることがあります。学校のトイレで排便することに抵抗を感じ、友達の目を気にして我慢してしまうケースも少なくありません。
こどもの便秘の治療法
「数日おきには出ているから大丈夫」と思って便秘を放置してしまうと、排便しない状態が癖になってしまうことがあります。そのため、こどもの便秘は早めに治療を行うことが大切です。
便秘の治療をした方がいい理由
便秘を放置すると、次のような悪循環に陥りやすくなります。
- 便が腸の中に長くとどまり、水分が吸収されて便が硬くなる
- 排便時の痛みが強くなる
- 痛みが嫌で、排便を我慢してしまう
その結果、便が直腸にたまり、直腸が拡張し、本来起こるはずの排便反射が弱くなってしまいます。便意を感じにくくなり、ますます便が出にくい状態になります。

便秘治療 生活習慣の見直し
こどもの便秘の治療では、薬による治療だけでなく、日常生活の工夫も大切です。
食後にトイレの時間を作る
食べ物が胃に入ると、その刺激で大腸が動き、便を直腸へと送り出す「胃結腸反射」が起こります。そのため食後は排便のチャンスです。
特に、朝食後に自宅でトイレに行く時間がないと、園や学校では排便を我慢してしまい、結果的に1日出ないまま過ごしてしまう子も少なくありません。
トイレを強いる必要はありませんが、食後は時間に余裕を持って「トイレタイム」を作ってあげることが大切です。
水分をしっかりとる
水分が足りないと便が硬くなり、便秘につながります。
出なくても怒らない、できたことをほめる
トイレトレーニング中に叱られてしまうと、こどもは「トイレ=嫌な場所」と感じ、便意を我慢するようになることがあります。
思わず叱ってしまう保護者の方の気持ちはよくわかりますが、出なくても責めず、トイレに座れた・頑張れたといった成功体験をしっかりほめてあげましょう。
便秘治療 飲み薬と浣腸
こどもの便秘治療では、飲み薬と浣腸をお子さまの年齢や便秘の状態に合わせて使い分けながら治療を進めていきます。
飲み薬は主に
- 便をやわらかくする薬
- 腸の動きを刺激する薬
に分類され、粉薬・シロップ・錠剤など剤形もさまざまです。お子さま一人ひとりに合った治療を行います。
便をやわらかくする薬
赤ちゃん向け
- マルトース(マルツエキス)
- ラクツロース(モニラック)
甘くて飲みやすいシロップタイプの薬で、乳児に使用されることが多いです。
幼児・学童向け
- 酸化マグネシウム(マグミット、重カマ)
効果が確実で安全性も高いです。粉薬、錠剤があり、飲みやすい薬です。 - ポリエチレングリコール(モビコール)
2歳以上から使用でき、効果の高い薬です。海外では最も一般的に使われています。
水・ジュース・牛乳などに溶かして飲む薬ですが、飲みにくさを感じるお子さまもいます。
腸の動きを刺激する薬
- ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)
- センノシド(プルセニド)
便をやわらかくする薬だけでは効果が不十分な場合に追加することが多いです。
浣腸について
浣腸は長期間排便がなく、硬い便が直腸で栓をしてしまっている場合などに使用します。
また、飲み薬がどうしても飲めないお子さまに、定期的に行うことがあります。
生後6か月頃までの乳児では、浣腸薬を使わずに、綿棒を肛門から入れて刺激する「綿棒浣腸」だけでも、十分に効果を期待できます。
当院では院内で浣腸をすることも可能ですので、ご希望の際はお気軽にご相談ください。
よくある質問(Q&A)
何日うんちが出なかったら受診した方がいいですか?
3日以上排便がない状態が続く場合は、一度ご相談ください。
便秘の薬はクセになりませんか?
便秘の薬そのものがクセになることは、まずありません。
それよりも、便秘を放置することで便が硬くなり、「出ない状態」がクセになってしまうことの方が問題です。必要に応じて薬を適切に使用し、排便のリズムを整えることが大切です。
食事や水分だけで治せませんか?
軽い便秘であれば、生活習慣の見直しだけで改善することもあります。
ただし、食物繊維や水分摂取の効果は、薬や浣腸と比べると限定的です。
便秘の薬は、いつ終わりにすることができますか?
毎日、または1日おきに安定した排便リズムができた場合には、薬を少しずつ減らし、中止を検討します。
一時的な便秘であれば、1~2週間程度の治療で終了できることもありますが、慢性的な便秘の場合は、6か月~2年程度の治療が必要とされることが多いです。
報告によっては、2年以内に薬物療法を完全に中止できるお子さまは約50%とされており、体質的に重度の便秘の場合には、薬を続けながら排便をコントロールしていくことが望ましいケースもあります。
綿棒浣腸をしても、うんちが出ません。コツはありますか?
綿棒浣腸でうんちが出ない原因として最も多いのは、綿棒の挿入が浅すぎることです。
綿棒の先端部分だけを入れると深さが不十分で、赤ちゃんが痛がって泣いてしまうことがあります。そこからさらに1~2cmほど奥までやさしく入れることで、便がつく深さまで届くことが多いです。
誤って深く入りすぎないよう、綿棒の真ん中を手で持ち、決して手を離さないようにしてください。
ご自宅での対応が難しい場合は、実際にクリニックで一緒に確認しながらお伝えすることも可能ですので、お気軽にご相談ください。
