- 朝起きられないお子さまのご相談について
- 起立性調節障害とは?
- 起立性調節障害を疑う症状
- 起立性調節障害の検査・診断
- 起立性調節障害の治療と日常生活での対応
- 起立性調節障害以外に考えるべき疾患
- 受診の目安
朝起きられないお子さまのご相談について
「何度起こしても起きられない」
「午前中はほとんど動けない」
「学校の時間になると体調が悪くなる」
このような症状で受診されるお子さまは、決して少なくありません。
一見すると怠けているように見えたり、生活習慣の問題と思われがちですが、背景に体の病気が隠れていることも多くあります。原因を適切に見極め、必要な対応や治療を行うことで、症状が改善していくケースもよくみられます。
このページでは、「朝起きられない」という症状を中心に、
小児科で考える主な病気、必要な検査、対応・治療について、わかりやすく解説します。
起立性調節障害とは?
起立性調節障害は、自律神経の働きがうまく調整できず、立ち上がった際に血圧や脈拍のコントロールが乱れることで、めまい・頭痛・倦怠感などの症状が現れる病気です。
主に小学校高学年頃からみられ、中高生のおよそ10人に1人が該当するといわれており、決して珍しい病気ではありません。
症状は午前中に強く出やすく、午後になるにつれて徐々に軽くなる傾向があります。
また、土日や長期休暇中は比較的症状が落ち着くことが多いのも、起立性調節障害の特徴のひとつです。
起立性調節障害を疑う症状
起立性調節障害の代表的な症状は、以下のチェック項目です。
11項目のうち3項目以上当てはまる場合には、起立性調節障害の検査が推奨されます。
※2項目のみ該当する場合でも、症状の出方や生活への影響によっては、検査を行うことがあります。
チェック項目
- 立ちくらみやめまいを起こしやすい
- 立っていると気分が悪くなる、倒れそうになる
- 入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気分が悪くなる
- 少し動くと動悸あるいは息切れがする
- 朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い
- 顔色が青白い
- 朝は食欲がない
- ときどき腹痛がある
- 倦怠感がある、疲れやすい
- 頭痛がある
- 乗り物酔いをしやすい
起立性調節障害の検査・診断
起立性調節障害が疑われる場合には、「新起立試験」と呼ばれる検査を行い、診断の参考とします。検査は原則として午前中に行います。
起立試験中には、めまいや気分不良、ふらつきなどの症状が出ることがあるため、当院では安全性を最優先に考え、検査が必要と判断した場合には、近隣の医療機関へご紹介しています。
新起立試験の具体的な流れ
- 安静時間
静かで刺激の少ない環境で、10分間横になって安静に過ごします。 - 安静時の測定
安静時の血圧・脈拍・心電図などを測定します。 - 起立
患者さんご自身に立ち上がっていただき、10分間起立を維持します。 - 起立後の測定
立ち上がった後、数分おきに血圧・心拍数を測定し、検査終了時に心電図を記録します。 - 検査後の休憩
検査終了後は、座った姿勢または横になった姿勢でしばらく休憩します。
検査で分かること
起立後に、
- 血圧がどの程度低下するか
- 血圧が回復するまでにどのくらい時間がかかるか
- 心拍数がどの程度上昇するか
といった変化を総合的に評価し、起立性調節障害の診断を行います。
起立性調節障害の治療と日常生活での対応
起立性調節障害の治療では、まず日常生活の工夫を行うことが基本となります。生活改善を行っても症状の改善が不十分な場合には、薬物療法を併用して治療を進めていきます。
日常生活で気を付けること
日常動作での工夫
立ちくらみや失神を防ぐため、日常の動作では次のような点を意識しましょう。
- 立ち上がるときは、一度頭を下げてから、ゆっくり立ち上がる
- 集会などで立っているときは、長時間じっと立ち続けない
(足を交差させる、足踏みをするなどの工夫を行う) - めまいや立ちくらみを感じたら、無理をせず、すぐに座るか横になる
水分・塩分の摂取
起立性調節障害の背景には、水分や塩分の不足が関係していることがあります。
水分摂取の目安(日本のガイドラインより)
- 体重40kg未満のお子さま:1日1.5L以上
- 体重40kg以上のお子さま:1日2.0L以上
起床後すぐにコップ1杯の水を飲むこともおすすめです。
塩分摂取の目安
通常の食事に加えて、1日あたり約3gの塩分を追加して摂取することが推奨されています。
規則正しい生活
早寝早起きを心がけ、寝る時間・起きる時間をできるだけ一定にしましょう。睡眠不足は症状の悪化につながります。朝は太陽の光を浴びて、体内時計(概日リズム)を整えましょう。
適度な運動
まずは、症状が比較的落ち着きやすい夕方頃に、毎日30分程度の散歩から始めましょう。
下肢の筋力をつけることで、
- 血流循環の改善
- 心肺機能の強化
- 自律神経機能の改善
といった効果が期待できます。
これらの日常生活での工夫を続けるためには、保護者の方や学校の理解・協力が欠かせません。
当院では、学校提出用の診断書や意見書の作成についても対応していますので、どうぞお気軽にご相談ください。
起立性調節障害の薬物療法
起立性調節障害の治療では、生活指導を基本とし、それでも症状の改善が不十分な場合に、飲み薬による治療を併用します。
主な治療薬
ミドドリン塩酸塩(メトリジン®)
血管を収縮させ、低下した血圧を上げる作用があります。副作用は少なく、最初に使用されることが多い薬です。起き上がる時間の30分〜1時間前に服用すると効果的です。
アメジニウムメチル硫酸塩(リズミック®)
交感神経の働きを活発にし、血圧を上げる作用があります。副作用として動悸、頭痛、ほてりなどがみられることがあります。
プロプラノロール塩酸塩(インデラル®)
心拍数を低下させ、動悸を抑える作用があります。新起立試験で、体位性頻脈症候群(起立時に心拍数が大きく増加し、動悸・ふらつき・頭痛などが出るタイプ)と診断された場合に、使用を検討します。
起立性調節障害以外に考えるべき疾患
「朝起きられない」という症状の背景には、起立性調節障害以外の病気が隠れていることもあります。
そのため小児科では、次のような病気も念頭に置いて診察を行います。
朝起きられない・だるさが強いときに考える病気
- 貧血
- 甲状腺機能異常
- 感染症後の体調不良
- 睡眠時無呼吸症候群
- てんかん
- 心疾患
- うつ状態・不安障害
- など
問診や診察の結果、これらの病気が疑われる場合には、血液検査、心電図検査、脳波検査などを行うことがあります。
受診の目安
次のような場合は受診をおすすめします。
- 朝起きられず、学校に行けない日が続いている
- 午前中だけ極端に調子が悪い
- 何科に相談したらよいか分からない
- 検査では異常がないと言われたが、症状が改善しない
- 本人も保護者も対応に困っている
当院では、体の評価と同時に生活背景も含めて丁寧にお話をうかがい、お子さまに合った対応を一緒に考えていきます。
